第12章 LOVE SAUCE 前編
「ハハッ、いつものバニーの顔だな」
「!!」
ニコニコと笑いながら、いつもの笑顔で言ってきた。
「俺、好きだぜ、バニーの顔」
「そ、それはどうも……」
今のどういう意味だろう……
虎徹さんは、僕の手を引っ張りながら、ゆっくり歩く。
「どこに行くんですか?」
「あの月さ、旨そうだろ?」
「え?」
「ほら、黄色くてまん丸で、大きくてさ」
「あ~……そうですか?」
「うん」
うん、って……
これ虎徹さん、僕に甘えてるの!?
ま、まさかね……
って言うか、解らない……
虎徹さんの言動一つ一つが僕には謎だ。
虎徹さんは、僕の気持ちに気付いているんだろうか……
それを解って、今、手なんか繋いできて……
鼻歌を歌っているんだろうか?
でも、それだったら、わざわざ、亡くなった奥さんの話しなんて、僕にしなくても……
そう、何度も僕は自分の気持ちを彼に伝えようとした事が……ある。
でも、その度に勇気が出なかったり……タイミングが悪かったりと、
ま、どれもイイワケなんだけど……
とにかく、彼に気持ちを伝えた事はないんだ。