第12章 LOVE SAUCE 前編
「はぁ~どうして、ここまで飲むんですか?」
僕はポケットからハンカチを出して、虎徹さんの顔を拭いた。
「……お前、そんなの持ち歩いてんの?」
そう言って、僕からハンカチを奪うと
ブーーーーンッ
と、鼻をかんだ。
「うわ!やめて下さいよ!」
「あ、悪ぃ……はい、返すわ」
そう言って鼻水がたっぷり付いたであろう、ハンカチを僕に差し出してくる。
「差し上げますよ……」
「えー?これ高いんだろー?」
そんな事を言うなら、鼻なんてかまないで下さいよっ!!!
と、思ったけど声が出なかった。
だって、虎徹さん……
また、泣き出したから……
「で、どうしたんですか?今日は。泣き上戸なんですね」
すると目に涙を一杯に溜めて、いつものように、へへっと笑うと
「もうすぐ嫁さんの命日なんだ……」
そう言って虎徹さんは、左手の薬指に嵌まった指輪を撫でる。
それはもう、愛しそうに……
そうか……
この状況をなんとなくナットクした僕は、
「じゃあ、一杯だけ。付き合いますよ」
そう言って、甘い貴腐ワインをオーダーした。