第1章 キスだけじゃ、我慢できない
翌朝、当然のように泊まっていったバニーと、3人で朝食をとる……
「なぁ……その服……」
「あ、これ?いいでしょ?やっぱり、バーナビーはセンスいいよねーこっち着て帰ろうと思って」
そう昨日、楓はどちらかの服を選んだのかと思っていたら、バーナビーが選んだ方の服もきっちり買っていた。
「お前、当分のあいだ、小遣いなしだな。」
「えーーーっ!何でよっ!」
「遣いすぎだ!」
「ケチっ!!!」
「まあまあ、いいじゃないですか、たまには。ねぇ、楓ちゃん」
「ねぇ~」
あ、二人がまた、結託してるじゃねぇか!
「へーへー」
「あ、お父さん!帰る前に写真撮っていい?」
「おーバニーとか?」
「……」
「ん、?どした?ケータイ貸せよ」
「三人で撮っていい?」
「!!!」
嬉しすぎて声が出ない俺に
「楓ちゃん、貸して。真ん中に来て」
「うん」
バニーが腕を伸ばして、3人が入るようにシャッターを切る。
それを楓が嬉しそうに確認している。
「後で写真送るね」
「おゥ」
「はい」
そして時間が来た。
楓を送りに駅まで3人で行く。
腕を組んで歩くバニーと楓の後ろを、荷物を持った俺が着いていく……
来たときとなんら変わらない光景。
だけど、違った。
くるっと振り向いた楓が言った。
「ねぇ、バーナビーは新しいお父さん?」
「へッ!?」「えっ!?」
「お母さん……じゃ、ないしなぁ~」
「か、楓!?」
焦っている俺をよそに、楓が続ける。
「私、新しい家族が増えて嬉しいよ。でも、まだおじちゃんと、おばあちゃんには、内緒にしといてあげる」
……
強い……
間違いなく、楓は友恵と俺の子だ。
「そうか、ありがとう」
「ありがとう……楓ちゃん……」
俺達二人が礼を言うのを聞くと
楓は元気よく手を振って、電車に乗って帰って行った。