第1章 キスだけじゃ、我慢できない
足音が聞こえてきたので、また、俺達は少し距離を開ける。
「次、どっち入る~?」
「あれ?楓、そのパジャマ……」
「ふふーバーナビーが買ってくれたの、可愛いでしょ?」
「バニーお前、楓にいくら使ったんだよ」
「いいじゃないですか、僕も買いましたし」
「えッ?」
パッとパジャマを出してくるバーナビー。
「なんだよ、それ!楓とお揃いじゃねーかッ!!」
「ふふーいいでしょー?」
得意気に返事をする楓。
「あ、お、お父さんにもあるとか!?」
両手をバニーの方に向けると
後ろから楓の冷ややかな声が聞こえた。
「あるわけないでしょ。こんな可愛いの。お父さんに似合うはずないんだから、ね、バーナビー」
「はい。じゃ僕“guest”なので先にお風呂入ってきます」
「あ!バーナビー!シャンプーもコンディショナーも、ボディソープも、すーーーーっごくいい匂いだったよ!ありがとう」
「喜んでもらえて良かったです」
ニッコリと笑うバニー。
こいつら、仲良すぎじゃねーのかッ!?
大体、バニーはいつも寝る時は、アンダーウェアだけだろ!?
俺は何に嫉妬していいのかわからずに、なんだか少し悔しい気分になっていた。
「お父さん……」
「んー?」
「ありがとうね」
「楓~」
懲りずに抱き締めようとしたけど、やっぱりかわされる……
「でも、安心した。バーナビーが一緒だと心強いよ」
「そ、そうか」
「うん」
それ以上、何も言ってこない楓に、ドキドキしていると
「明日は早いから、もう寝るね。お休み。あ、バーナビーにも声だけかけてこよーっと」
「おぉ……お休み……」
明日の早朝、列車に乗ってオリエンタルタウンに帰る楓。
ま、こんな仕事してるんだから、仕方ないよな……