第10章 キスだけじゃ、誘えない
何か少しでも二人の関係を発展させるいい案はないかと悩んでいたら、あっ、と、いう間に家の近くまで車が来ている。
「あ、あのッ!タイガー!」
「お前さー」
二人、同時に声を上げた。
「な、何よ?」
しまった、またイヤな言い方しちゃった。
でもタイガーは気にしていないのか、クスリと笑うと
「外でタイガーは止めてくれよ」
「あっ!」
そうか、確かに私たち二人とも顔バレしていないとはいえ、外でヒーロー名で呼び合うのはマズイ気がする。
「ほら、ここで大丈夫か?」
家まで、あと少しのところでタイガーは車を停めた。
「こんな時間に、こんなおっさんといるとこ見られたらパパもママも心配すんだろ?」
「え?あ……大丈夫じゃない?会社の人とか言っておけば」
「あーそっか……でも、ま、ここなら、お前が家まで入るの見届けれるしさ」
そう。タイガーは家から少し離れているけど、一本道の見通しのいい所に車を停めてくれていた。
「あ、ありがと……」
「ん」
そう軽く返事をすると、タイガーは運転席のドアを開けて外に出た。
私も……少し残念な気持ちを胸に車から降りると、もう一度タイガーにお礼を言った。
「今日はありがとう…………虎徹、さん……」
するとタイガーが少し目を大きくしてから、顔をパッと手で押さえた。
その様子を見ていると
「俺から言っといてなんだけど……けっこう……クルんだな……名前で呼ばれると」
「えっ」
「あー悪ィ。聞かなかったことにしてくれ」
「無理っ!」
私は思わず顔を押さえているタイガーの手を、バッと取った!
暗くてよくわからないけど、、、
まさか赤くなってる!?