第10章 キスだけじゃ、誘えない
「待っててくれたの?」
「当たり前だろー?」
ニカッと笑いながらタイガーがスポーツドリンクを渡してくれた。
「あ、ありがと……」
「おぅ。早く乗れよ送ってやるから」
「え、でも。さっき飲んでたんじゃないの?」
「車で来てんのに、飲むわけないだろッ」
「あーそっか……」
「腹減っただろうけど、飯は家で食えよ。もう遅いから」
「うん……」
あー帰り道の心配に、ご飯の心配。
ますます保護者みたい。
「ほら、乗った乗った」
タイガーの優しさに甘えてばっかだな。
それでもこの甘い優しさは、手放せない。言われた通りに助手席に座る。
私がシートベルトをしたのを確認すると、ゆっくりと車が発進した。
「今日のステージ、すげェ良かったな。拍手も多かったんじゃねェの?」
タイガーが前を見ながら、話しかけてきた。
「うん。ありがとう」
「なんだよー機嫌いいなーそんな素直に返事しちゃってサ」
今度は横目で言ってくる!
「はぁっ!?ホント、失礼なんだからっ!」
「ははっ!悪ィ悪ィ」
!!!!!!
タイガーが運転席から手を伸ばして、私の頭をポンポンと撫でた。
あまりの嬉しさに固まっていると
「あっ!これってもしかして、セクハラになんの!?」
…………バカ
「今日は、特別。ならないわよ!」
なんてまた憎らしい口を利いてしまう。
「助かったな」
なんてケラケラ笑ってるタイガー。
はぁ~せっかく車の中で二人きりなのに。いい雰囲気になんて、全くならない。
でも……
でも、、、
こんなチャンス
早々にないよねっ!?