第10章 キスだけじゃ、誘えない
「あーもういいから、早く行けよ」
タイガーが私の手をパッと振り払った。
けど、もう一度私はその手を取った。
そして、今度は目を見ながら……
「ありがとう。虎徹さん」
「!!!」
今度は暗闇でも解るくらい、ハッキリとタイガーの顔が赤くなった。
「もういいよ、おっさんからかうなよ」
「からかってない!」
そう言うと私は、タイガーの手をグッと引き寄せると……
背伸びをして、タイガーの頬に
チュッ
と、キスをした。
「お前なーからかいすぎだろ?」
「からかって、ない……」
きっと私の顔も真っ赤だ。
でも、この手も、バッチリ正面から合った目線も離せない。
「はぁ~やっぱりダメだ」
大きなタメ息を吐くタイガーに
「何がダメなの?」
思わず聞き返していた。
「そんなキスじゃ、おじさんは誘えないぞー」
冗談めかして言うタイガーに思わず
今度はまた背伸びをして、口にキスをした。
小さな子供がパパや、ママにするような、軽いキス……
「悪ィ……」
「えっ……」
タイガーが謝ってから、私を片方の手でグッと抱き寄せた。
そして、もう片方の手で私の顔を上に向けさせると
今度はタイガーの顔が
近づいてきた……
そして
「逃げるなら今だぞ」
だって……
バカね
逃げるハズなんてない。