第10章 キスだけじゃ、誘えない
「オイ」
「……えっ」
タイガーに呼ばれて、パッと顔を上げた。
「ちょい休憩だ。トイレ、トイレ~」
「え……あ、うん」
ヤバッ、今めっちゃボーーッとしてた……
トレーニングセンターを出て、タイガーとハンサムの3人でダンスの練習をしに来てるのに……
「大丈夫ですか?」
「あ、うん。ごめ……」
「貴女、昨日遅かったんじゃないんですか?バーで歌って、その後……」
「うん……テスト勉強してた」
「解りますか?」
ハンサムが私のバッグから出てたテキストを手に持って聞いてきた。
「あー、ここがちょっと……そっちこそ、解るの?」
「えぇ。僕の得意な分野です」
「ゲッ!」
「酷いな、少し教えましょうか?」
「ありがとう……」
私が珍しく素直に言ったからか、ハンサムがクスッと笑った。
だって背に腹は変えれない!苦手なとこは、聞ける人に聞いておこう!
…………
ハンサムは丁寧に教えてくれるから、よく解る……
真剣に聞いていると
「虎徹さん、どうしたんですか?」
ドアの前に立っているタイガーに、ハンサムが声をかけた。
「えっ!いや!ほらっ!なんか二人の邪魔しちゃ悪いかなーって!!!」
はぁ!?
「何、言ってるんですか。でも、勉強の邪魔はしないで下さい」
冷静にハンサムが声をかけると
「あッ!勉強か~どれどれ……」
なんてテキストを覗きこんできた。
「………………解ンの?二人とも」
「ええ、もちろん」
「まあ、なんとなく」
ま、タイガーに教えて貰えるかも!?なんて期待はしてなかったけど……
でも……