第1章 キスだけじゃ、我慢できない
「……どう?お父さんが選んだ服だよ?」
そう、あの事件の前にどっちがいいか聞いてきた服だった。
「可愛いよ~楓~~~似合う!すごく似合う!」
「ぷっ、何それ!スカイハイのマネ?」
「いや、違う!お父さんはな、素直な感想を!」
「もういいよー恥ずかしいっ!早く食べよう!」
バニーがいつの間にか用意していたエプロンを外しながら、俺達を見ている。
「バニー!ほら、俺が選んだ服!な、楓に似合うだろ?」
「そうですね、楓ちゃんは可愛らしいから、何でもよく似合いますよ。ね」
「ね~」
……
なんだ、バニーのやつ。負け惜しみか?自分のが選ばれなかったからって。
まあいい。それも含め、バニーも可愛いヤツなんだ。
「しゃぶしゃぶ……僕、初めてですよ。簡単でいいですね、この料理」
「お前、鍋はなかなか奥深いんだぞ!鍋奉行とかいるんだからな!」
「何ですか、それ。折紙先輩が聞いたら、喜びそうですけどね」
「そうだな、また、今度みんなで鍋でもするか」
「えーいいなー!楓もまた来ていい?」
「もちろんですよ!今度は僕の家にも来て下さい」
「わーい!」
あ、また、この笑顔。
俺にはなかなか見せないのにな。バニーには、すぐに花が咲いたような笑顔を見せる。
「さ、食べましょう」
『いただきまーす!』
3人で楽しい夕食が始まった。