第1章 キスだけじゃ、我慢できない
3人で朝食を食べると、ゴールドステージ地区のショッピングモールへ出掛けた。
食洗機に、シャンプーやらなんやらに、あと楓に服を買ってやりたいとか、バニーが言い出した。
……
「なぁ、ちょっと休憩しないか?」
すでに、俺の両手には荷物がずっしりとある……
「……あぁ、そうですね。楓ちゃん、甘い物でも食べに行きましょうか?」
「うん!あっ!」
楓が両手に持っていた服を、俺たちに見せてきた。
「ねぇ、これとこれ、どっちがいい?」
「お父さんは、右手に持ってるやつがいいなァ~可愛いじゃないか~」
「僕は、左ですね。楓ちゃんの雰囲気を引き立ててます」
思わずバニーと睨み合っていると
楓から声がかかった。
「えっと……先に、休憩行こっか?」
「お、おゥ……」
「そうですね……」
3人で目的の店に向かいかけたその時、
俺達のPDAが、鳴り響いた。
バニーが俺を制し、楓に背中を向けアニエスさんと連絡を取る。
「えっ?ショッピングモールに?はい。今、現場にいますので、そのまま向かいます」
すると、大きな声が聞こえてきた。
『ダメよ!ヒーロースーツはちゃんと着て頂戴!カメラも間に合わないわ!』
アニエスさんの声は、すぐに消えた。バニーがあっさりと通信を切ったからだ。
今までのバニーなら、考えられない行動だったが……
俺とバニーは目を合わせると、大きく首肯いた。
「楓、すーぐ終わらせるから、そこの店で待っててくれるか?」
「荷物も、預かっててくれますか?」
「うん!大丈夫だよ!気を付けて、行ってきてね!」
「おう!」
「はい!行ってきます!」
俺とバニーは、楓を安全そうな店の中に連れて行くと、犯人が入って来たという入り口の方へ向かった。