第6章 dandelion ~love's oracle~ Ⅰ
「あれ?何でわかんの?」
「あー私ね、目が見えなくなってから、匂いに敏感になって……」
「えっ!?俺、臭う!?」
思わず焦った俺に
「違いますよ。なんだろ……貴方……すごくイイ匂いがする……初めて嗅ぐ匂い……」
優しく宥めるように話しかけてくる。
「あー前に住んでたとこで買ったヤツだ。こっちじゃ見かけねー」
「うーん……なんだろ?この匂い……どこかで嗅いだことのある匂いなんだけどなぁ~」
なんだかクンクンと匂っているみたいで、照れ臭くなった俺は
「そうかぁ?でも、ま、一番俺に合ってる匂いだな」
冗談めかして、そう言った。
「ふふ……そうなんですか?」
「おぅ。それより、脚。出して」
俺はキズを、買ってきたミネラルウォーターで洗ってやった。
「っ……」
「悪ィ、しみるか?」
「大丈夫です。少し痛かっただけたから」
「そうか……もう少しだけ我慢しろよ?」
「うん……」
傷口をキレイにした後、大きめの絆創膏を貼ってやった。
「よし、いいぜ。当分痛いだろうけど……これ持って帰んな。悪かったな」
俺は残りの絆創膏を女性に渡した。
「いえ、ありがとうございました」
その時、俺は女性の顔を見てドキッとした。
どうやらケガに気を取られて、ハッキリと顔を見ていなかったことに、気付いた。
ふわふわのブロンドヘアーに、やわらかい笑顔、
そして……
俺を映しているのに、俺の事が見えていない……
エメラルドの様にキレイなグリーンアイ……
アイツを思い出すのに充分な容姿だった。