第6章 dandelion ~love's oracle~ Ⅰ
「悪い!大丈夫か?」
「え、えぇ……すいません……」
「いや、こっちこそ悪かった」
隣にいる犬が、倒れた女性の顔をペロペロと舐めている。
「ごめんごめん、大丈夫だよ」
倒れた女性が犬に話しかけている。
俺が手を貸して、その女性を立たせるとその女性は、こちらの方を見て
「ありがとうございます」
ニコッと微笑みながら言った。
「いや、こちらこそ……」
あれ?こちらの方を見ているだけで、この女性……俺を見ていない?
いや、違う。
「アンタ、目が……」
「あ、そうなんです目が見えなくて……それで躓いてしまって……」
「その犬は……盲導犬じゃないよな?」
「え、ええ……あ、いっ……」
「え?足か?」
「少し、擦りむいたかな?」
そう言う女性につられて、チラッとその足元を見ると
「うわ!悪い!結構いってるよコレ!ベンチに座って待ってろよ!」
「えっ?」
「すぐ戻るからっ!ここ座ってろよ!」
俺は女性をベンチに座らせると、急いで公園の近くにあるドラッグストアへ駆け込んだ。
水と絆創膏を買って戻ると、女性は犬の頭を撫でながら、何か話しかけている。
何を話しているのかと、後ろからそっと近寄ると
「あ、早かったですね」
クルッと女性が後ろに振り向いた。