第5章 Loving you is Killing me.Ⅲ 前編
病室に顔を出したのは、ライアンだった。
「おォー今日はここで寝て帰るからさ、こいつ早く連れて帰ってやれよ。」
「ふぅーん……ま、元気そうじゃん。さっきは顔色も悪かったけどナ」
「まーな」
「……ライアン、仕事は?」
「今日はもう終わり。一緒に帰ろうぜ」
また僕の肩に手をかけてくる。
「いえ、僕はもう少しここに……」
「いても仕方ねーんだろ?」
ライアンが虎徹さんに聞いている。
「あァ。早く連れて帰ってくれ。こいつがいたら、可愛いナースとお喋りも出来ねーからさ」
「虎徹さん!?」
「早く帰ってくれ……」
小さく呟いた虎徹さん…………
「じゃあな、おっさん!お大事に~」
「虎徹さん……」
もう虎徹さんは、こちらを見ない。
手だけを、ヒラヒラと振っている……
これが……本当に……
僕の選んだ、、、道……?
………………
病院を出るとライアンが聞いてきた。
「何か食って帰る?それとも、買って帰って部屋で食う?」
僕は足を止めるとライアンの顔を見て言った。
「いえ……今日は、自宅に帰ります…………」
ライアンはその言葉を聞くと、僕の目を見てフッと笑い
「そう言うと思った。じゃあな、また明日~」
クルッと背を向けると、後ろ手に軽く手を振って……
そのまま一度も振り返らずに、帰って行ったんだ。