第5章 Loving you is Killing me.Ⅲ 前編
「もう手元の折紙が少なくて、気付いてくれそうなタイミングで飛ばそうって、先輩が……」
「ははっ……なんだろうな……なんとなく、お前が来たような気が……したん……
だあっ!!!何言ってんだ、俺っ、つっ……」
「虎徹さん、大丈夫ですか!?」
話すと痛がる虎徹さんに僕は思わず、彼の手を握った。
筋ばった、いかにも仕事をしてきた、そんな男らしい手をギュッと握った。
でも……やっぱり虎徹さんは、握り返さない。
まだ腕が痺れているのか……それとも……
あの夜のことがあるからなのか…………
「どうして……二人は……そこまでして、自分に嘘をつくんですか?」
「え……?」
千代紙さんの声に、思わず聞き返してしまった。
「千代紙」
虎徹さんが低い声で制する。
千代紙さんはその可愛らしい顔で、虎徹さんを睨んでいる。
「お前、それより……良かったな、折紙に抱っこされてたじゃねーか」
虎徹さんのその言葉で、一瞬にして顔を真っ赤に染める千代紙さん……
「貴女、折紙先輩が好きなんですか?」
途端に可愛らしい顔をして、ウンウンと頷く千代紙さん。
その表情を見て、僕は……
僕は、それはもう……
どうしようもないほど
ホッとしたんだ。