第1章 輪廻
長いこと続いている日照りにも関わらず、目の前の巨木は美しい白い花を咲かせている。
その香りは甘く、深く吸い込めば目眩を起こす。
不思議な大木。
「吊るせ」
「…ぐっ…」
ー縛られた縄が身体に食い込む。
ギリギリと身を削るように、肌に擦れて痛みが走る。
ギシリと音を立て、あかの身体は地を離れた。
空に伸びた太い枝に縄が回され、あかは吊るされる。
「恨んでくれるなよ、あか。おめぇの運命(さだめ)だ」
男が言う。
「…運命、」
あかは、その言葉に反応する。
身体中の地が一気に巡り、熱くなった。
「何が、運命だ…っ、てめぇらの都合の良いように私を使いやがって…!恨むなだと?憾まずにいられようか!この怨み、必ず晴らす。例え我が身が地獄に落ちようとも、てめぇらに、それ相応の報いを!必ず、必ず遂げてみせよう…っ」
あかの紅い瞳が、ギラリと光る。
「ひぃっ!」
面妖なあかの空気に、男たちは慄いた。
腰を抜かし、わなわなと震えだす。
「ば、化け物じゃ…」