第1章 輪廻
そこは、美しい花を咲かせた、妖しの樹。
光が無い、暗い夜の中でも淡く輝いている。
ただ、いつもと違うのは、そこに‘ナニか’が吊るされていると言うこと。
風もないのに‘ソレ’は、静かに揺れている。
「…………」
それは、つい先程事切れた、あかであった。
頬には幾重にも流れた涙の跡があり、目尻にはまだ乾いてない涙が溜まっている。
無理に動いて縄で擦れた腕が、痛々しい。
歯を強く食いしばっていたのか、少し空いた唇の隙間から血が流れていた。
青い鬼火は、ふわふわとあかの周りを一周する。
何かを吟味しているようで、近づいては離れ、離れては近くを繰り返していた。
ー死人(しびと)と鬼火。
異様な空気の中、鬼火は満足したのか、あかの胎内へ入った。
刹那、冷気があかの身体を包み、白い霧でが辺りに広がる。
ブチ、と音の後に次いでジャリ、と土を踏む音が響いた。