第15章 It’s my fault
彼の上に覆いかぶさり、私は笑う。
「いいじゃん、減るもんじゃないんだし。一回くらい」
肌蹴た彼のバスローブ、襟元をぐいと広げて喉が詰まる。
「減る減らないの問題じゃねぇだろバカか」
「バカでいいよ。軽い女って思ってくれていいから抱いてよ」
口元で笑って、心で泣いて。
そう言うと、彼が私を引き寄せた。
「一回だけだ。この部屋出たら全部忘れちまえ」
齧り付く甘い実は禁断の味。
こじ開けられる花園は未だ誰も踏み入れたことが無い。
ならば、せめて一番に招き入れる人は最愛の彼が良い。
「相澤、くん…」
痛みで誤魔化す涙くらい、許されてもいいだろう。
手探りで交わる出来事が痛くて悲しくて幸せ。
「まいか大丈夫か…」
薄明かりの中で彼が私の頭を撫でた。その手が愛しくて、また涙が落ちる。
「痛くない、気持ちいいよ」
通り雨に降られて、たった数時間。私はどれだけ自分に嘘を付けばいいのだろうか。
少しだってセックスの良さが分からない。それでも彼と繋がる、ただそれだけで心がてっぺんに昇る。
ぽとり、ぽとりと私の肌を突っつくのは、彼の汗か。
「ねぇ相澤くん…その子の事、好き?」
「……好きだ」
「そっか……んっ、その子、幸せだね」
「まいかはっ…まだ好きなのか?」
「っ…そうだね、まだ好きだなぁ」
私が落とす涙。彼も同じ様に泣いてくれたら幸せだ。
でも彼は違う誰かを思って涙を流すのだろう。
それでも良い。今、満たされている。
今日の出来事は、青い春のせい。
私も彼も、悪くないのだ。
忘れてしまえ。私は忘れはしないから。