第15章 It’s my fault
夢に堕ちる。
堕ちて、蘇り香るあの日。
「まいか」
入学して一ヶ月。彼が私を呼んだ。
食堂に急ぎたい気持ちが勝る十五の春。
「どうした?」
近寄らず、離れた場所から彼に答えた。
すると手招きをされた。
のそのそと歩み寄ると手が伸びた。
「朝の授業の時から乗ってた」
頭を撫でられ、ずいと差し出された掌。
ふわり、開いて桃色。
「花弁乗ってたの?ずっと?」
「ずっと」
左手はズボンのポケット、右手は桃色の花弁。
欠伸を噛み殺して私を呼んだ彼に胸が跳ねた。
「あ、ありがとう。早く捨ててソレ」
「……綺麗だな」
そう呟いて、彼が花弁を窓の外へと吹き飛ばした。
ひらり、ひらり。意思を持ったように舞う花弁。
「なんか勿体無い事したかもな」
陶器のような頬は女の私ですら嫉妬をしてしまいそう。
「なんで?なんで?」
「綺麗だったから…押し花にすりゃよかった」
下から吹き上げる春の風に揺れた前髪が私を煽る。
「相澤!早く行こうぜ!」
「うるせぇ…山田…」
赤く染まる私を見て、彼が一瞬笑った様に見えた。
そしてブロンドヘアが私をのぞき込む。
「What?なーんでまいかは赤くなってんだ?」
「うるさい!山田くんには関係無いでしょ」
柔らかい眼差しを二の腕で感じて春は過ぎた。
「まいか」
そしてまた耳元で彼の声がする。
漂う夢の中、はっきり聞こえる彼の声。
「おい、起きろバカ」
揺すられ目を開け、彼の顔とシャンデリアが目に飛び込んだ。
「あ、…あ、寝てた」
「無防備に寝てんじゃねぇよ」
ぎしりと沈む彼。
同じバスローブを纏い、頭を濡らした彼が側に居た。