第15章 It’s my fault
「先入れよ」
バスタオルを投げ付けられてバスルームへ押し込まれた。
扉からにゅ、と伸びた手が私のシャツを奪い取る。
黒いタイルを端から端まで丁寧に数えて我に返る。
クラスメイトの彼とたまたま下校時間に会って、たまたま通り雨に降られて、たまたま、私が彼を好きで。
冷えた身体を温め心が冷える。
何もしない、その一言が重たくのしかかって湯が痛い。
安物のシャンプーが髪を絡ませてイラついて悲しい。
立派なのにゴワつくタオルが肌を、心を傷つける。
「お先」
着たこともないバスローブが、私を狂わせた。
「エアコンの近くにシャツ置いてるけどなかなか乾かねぇ」
シャツを脱ぎ、上半身を露にした彼が私の心を濡らす。
「乾かなくってもいいじゃん。三時間、あるでしょ」
彼にバスタオルを押し付けて、バスルームへと追いやった。
狂って彼とどうにかなって、それでどうするんだろう。
濡れて透けたシャツの様に疎ましく思われるだけに決まってる。
広いベッドに腰掛けて彼の面影を探した。
「三時間、しか無い」
ベッドを跳ねる独り言。壁越しに聞こえる人工的な雨音が止まぬ事を心のどこかで願っていた。