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ENCORE

第13章 weep weep weep


屈託の無い笑顔でそう言って、小さく手招きをするから心臓が口から飛び出してしまいそうになる。

「どんな歌でも引かない?」
「おう!ダチの好きな物否定しねぇ!」

カリカリと音を鳴らせば肩をふるると震わせる仕草も可愛いと思う。

「ダチ、ね」

でもその一言に、心が少しだけ腐りそうになるのだ。

肩を寄せ、ヘッドフォンを支える手のひら。
触れ合う箇所が熱くなりそうだ。イヤホンだったら耳の赤さがバレてしまいそう。

小さな画面に映し出されるタイトルを見て、柄にも無く入れた恋愛ソングで、手を止めた。

まるで私の今の気持ちを歌う曲だろう。弾けるようなイントロは無く、ただ叶うかも分からぬ気持ちを歌う曲。
ただ、触れ合いそうでなかなか触れないMP関節に思いを込めた。

薄く伸びる影をひとつにして、たった四分弱。
その長いようで短い時間、ただ彼を見つめ曲を聞いた。

頬杖をつき、暗くなった黒板を見つめる、彼の横顔は息を呑むほど綺麗だと思った。

「まいか、ロックとか聴くんだな」
「好きじゃなかった?」

音が止まったのに何方もヘッドフォンを離さない。余韻に浸る訳では無いだろう。

「いや、まいかが聴くって思ったら、いい曲だなって思っちまった」

黒板を真っ直ぐ見つめたまま、ひたと寄り添ったMP関節が少しだけ動いた。

「もっかい、聴いて良いか?」

その言葉が、やけに染みて私はそっと再生ボタンを押した。
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