第13章 weep weep weep
彼がどんな歌を好むか知らない。
カサついた私の好みを好いてくれるかも
私には分からない。
それでも、彼は、良いと言った。
それだけで、満たされた。
ただ明日も明後日も、彼の横顔を見れたなら、
誰よりも幸せだと思っていた。
なのに、ほんの少し触れた其処から、少しずつ贅沢病に侵される。
出来れば近くで。叶うならずっと。
触れていられれば良いと思ってしまったのだ。
「またいい曲あったら教えてくれよ」
「私ロックしか聴かないよ」
「じゃあ俺、まいかが聴く曲が好きなのかもな」
闇に食われた教室で、そう囁きあって肩を寄せた。
始まるでもなく、終わるでもない。
ただ、私の好きを彼と共有するそんな時間が、私をまた少し、ほんの少しだけ贅沢にさせてしまうのだろう。