第13章 weep weep weep
異例の二周目。でもさっきと違うのは、横に彼がいる。
時折、目を細めたり唇を尖らせたりする彼に目が釘付けになった。
「悪くねぇな」
「あ、うん…」
イヤホンを外しながらぽつりと零す彼に、あぁやはりこう言う曲を聴く子が彼の好きなタイプなんだと一人勝手に打ち砕かれた。
「あ!おった!」
教室の扉から顔を覗かせ音楽プレーヤーの持ち主、お茶子ちゃんが現れた。
「まいかちゃん探しとったんよ!これ!充電しやなって思っとったん…よ」
指を指した薄赤。そして視線を泳がせ、お茶子ちゃんが笑う。そして意味有りげに近寄って耳打ちをされた。
「そういう事ね、まいかさん…」
「違っ、違うから!」
腕を掴もうとしてするりと逃げられた。
走り去ろうとして立ち止まるお茶子ちゃん。
くるりと振り返り麗らかな笑顔でこう言った。
「切島くん、まいかちゃんの事ちゃんと送ったりや!」
パタパタと音を立て去っていく。どうしよう、なんて言おう。ぐるぐると考えるよりも先に彼が口を開いた。
「あれ麗日のだったのか。なんかまいかっぽくねーなって思ってた」
柔らかい笑でそう言って、彼は更に椅子を近づけた。
「で?本当はどんなん聴くんだ?」
きらきらとした瞳に押されて、自分の鞄からプレーヤーを取り出した。
「イヤホンデカいな…」
「放課後はヘッドフォンにするから」
音楽を選ぼうとしてハッとする。
「けど一緒に聴くならこっちがいいよね」
スマホの付属品だった白いイヤホンを取り出し取り付けようとしたら、彼が止めた。
「このヘッドフォンのが音良く聴こえるんじゃねぇのか?」
「だけど二人一緒には聴けないよ」
どこまでも、私が思いを寄せる彼は天真爛漫で、私の心を揺らす。
「けど耳のところ、クルッとなるだろ」