第11章 Boo
「にしても買いすぎちゃう?」
業務スーパーのビニール袋七袋。彼が六個に私は一個、偏った半分こももうお馴染み。
「せやかてファット、朝からめっちゃ食べるやん。足りんくらいやで。家計は火の車やわ」
「まいかちゃん、ファットさんめぇ〜っちゃ稼いどるっちゅ〜ねん」
夕暮れの帰り道。この長い坂道で何度喧嘩をしたかしら。
いつだって誰かが止めに入るの。それで皆こう言うわ。
「ファット!まいかちゃんに謝り」
腑に落ちない顔すら可愛くて、愛おしい。
_____ねぇファットガム。ウチな、店出すねん。名前考えてぇや。
_____責任重大やんけ。そうやなぁ、fat Boo にしいや。
_____えぇ…意味は?
_____まいかちゃんが俺のかわい子ちゃんになったら分かるわ。
ミナミの端っこにある、私のお城。
大好きな彼が名付けてくれた、私の大切なお城よ。
「ただーいま」
「ファット、靴揃え………」
沈んでしまいそう。体も心も、全部。
大きな口が私を食べちゃうかと思ったわ。優しい口付けも、もう誰にも譲らない。
「もうお家やで、かわい子ちゃん」
「太ちゃん、靴揃えて脱ぎや」
広い筈の自慢のキッチンも彼と立てば窮屈で、それでも愛おしい息苦しさ。
「まいかちゃん」
洗い物をしていると呼ばれて行けば、手を広げられて吸い込まれる。
温かい腕の中で目を閉じると微睡んでしまう。
「あんなぁ、こないだ太ちゃんシュットさんなった時なぁ、デートしたやんかぁ………」
うつらうつら、話すと彼は優しく相槌を打ってくれる。
「したらな、常連さんが見とってな、まいかちゃん浮気かいなって、な、言うねん」
「そらあかん、コミットせん方がええな」
「えぇ〜、たまにはコミットしてぇな」
そして、お約束。彼は必ずベッドに優しく運んでくれるのよ。