第10章 eraser
「…なんだ」
まいかの心が悲鳴を上げずに居られるのであれば、出来る限りはしてやりたい。そんな風に思うのは、情だろうか。
いや、きっと愛も混じってしまったのだろう。
「相澤先生、私を除籍してください」
雲ひとつない夜。なのに何故か雷が光った気がした。
瞬間、まいかの、俺が求めた笑顔がはっきりと見えた。
「良いのか?」
「沢山考えたんだよ。だけど今の私はヒーローになんてなれない」
背筋を伸ばし、真っ直ぐ見る瞳に、何故だろう。鼻の奥がツンとして、寒さで誤魔化し捕縛布をぐっと鼻先まで上げた。
そして静かに、まいかに除籍を言い渡した。
誰も知らない、誰も見ていない、二人だけの海。
静かに、静かに、終わりを告げた。