第1章 intention
ずっと同じ白線を歩き続けば、勿論マンネリだってあった。他愛のない事がどうにも許せない日や、些細なささくれが大きな引っ掻き傷みたいになってしまう日も。
でも、今が幸せと思えるならこのまま白線を歩き続けるのも悪くないとも思えるのだ。何かの適齢期を過ぎても、別にこのまま…。
「あっ…待って、まだヤダ…」
「…ヤダじゃない…一回イッとけ」
ベッドで彼がどんな顔をするのか、どんな順番で私を愛してくれるのか。私の体も、心も、全部、じわじわと蝕むように彼の存在が大きくなっていく。
「消太と……消太とイキたいっ…誕生日だから」
愛撫を続けようとする彼の手を握り、吐息混じりに言うと彼は目を丸くして私の額を叩いた。
「なんだそれ」
「いつも私ばっかりイッてるから…今日くらい…一緒に…」
彼はいつも私の中に潜り込む時、ヘアゴムを外す。見られたくないと。
そして枕元の引き出しから壁を取る。
そう、いつも通りなら。
「え、ちょ…消太?」
でも彼はヘアゴムを外さない。枕元へも手を伸ばさない。私の膝裏に腕を通した。
「あっ、やだ、ゴムッ」
彼の動きを止めようとしても快感が邪魔をした。押していた彼の肩から、いつの間にか彼の首に腕を回して、彼の背中に痕をつけていた。
長年、心の何処かで求めていた彼の熱を体の一番奥で感じてしまった。彼の重みを感じながら。
「やっぱり歳には勝てねぇな」
「重たい…退いて…」
もそもそとスウェットを着込みながら彼が呟いた。余韻に浸る様な初々しさはもう無くて。冷蔵庫へ向かい水を取り出して私は彼に言う。
「ゴム切れてたの?」
「いいや」
まだ残る彼の熱に戸惑いが隠せなくて、私は水を零してしまった。
「ばっっっかじゃないの…私まだ契約残ってるんだけど?!デキたらどうすんの?!消太らしくない!!」
慌てふためく私を見て、彼は笑った。