第1章 intention
脱ぎ捨てたヒーロースーツにふらふらと歩み寄り、何かを拾い上げた彼が私の方へと歩み寄って腰を引き寄せた。
「責任取らないなんて言ってない」
掴まれた掌、昔ほど柔らかさも綺麗さも無いけれど、変わらない温もり。
「馬鹿。順序とか、あるじゃん」
寒さに震えているのか、信じられない光景に震えているの。唇が震えて上手く喋れなかった。
私の左手を持ち上げて、彼はこう言った。
冷たく冷えた銀の糸が私の薬指を甘く締め付ける。
「そろそろ結婚するか」
彼の言葉が優しくて、暖かくて、嬉しくて。泣いて笑った。
長く続いた二人の白線は、漸く終点。
いちにのさん、で飛び降りた。