第10章 eraser
一年から二年へ持ち上がり、同じ顔を教卓から眺める。
たった一年で沢山の試練を乗り越えた生徒の顔は少しばかり凛々しくなったように思う。
夏がもうすぐそこまで来ている。
インターンが活発になると、更に生徒は未来のビジョンをはっきり持ちイキイキとし始める。
「芦戸。寝るな」
「びぇっ……あ、すいません」
「青山、黒板を見なさい」
「太陽のキラメキ☆」
変わらない、このままこの子達の巣立ちを見送る。
例年通り。そう、いつもと同じ。
窓際でぼんやり話を聞かず空を見上げるアイツも、変わりなく。
「先生。話があるんです」
以前、シワを付けたあの場所でアイツが再び服を掴む。
「手短に済ませ」
「ここでいいの?」
チョコレートのような茶けた瞳が俺を見上げた。
また、出すべき言葉が出てこない。
ここで聞けばすぐに終わる。
「……七時半には終わる」
「ん。じゃあそれ位に寮抜け出して教室いるね」
パソコンを見るのが辛いのは年のせいだろう。愛用の目薬を取り出し時計を見た。
時刻は七時。話の内容は聞かなくともなんとなく分かってしまう。
だが思う程、気が重くない。インターン先の報告書を見ても、優秀の一言しか書かれていない。本来の目的を見つけたのだろう、それを言いたいのだろうと、勝手に思っていた。
「すまん、思ってたより長引いた」
「いいよ。予習、寮じゃあなかなか進まないから」
自席では無く教卓に肘をつきノートを広げる姿を見て直感で先程まで並べていた想像は有り得ないな、そう感じ取る。
どこで話を聞こうか一瞬考え、アイツの席に腰掛けた。
「わ、なんか新鮮」
「話ってなんだ」
少しの茶番に付き合うのもまた一興。
頬杖をついて、問い掛けた。
その日から、俺はアイツから目が離せなくなった。