第8章 WHO
「交代」
愛があるか、無いか、そこに関してはもう分からない。
制服に身を包んでいたあの頃は確かに愛があった。
だが今は、無いかもしれない。
麻薬の様に私の体を汚染する先生を手放せないだけかもしれない。
「先生って性欲無さそうなのに勃つんだね」
ずるりと抜かれた指を奪い、ふやけた肌を舌で舐め上げ笑うと抵抗された。
それでも掴んだ手首を力一杯引き寄せる。
指の間、爪の隙間、私を犯した此方の手。丁寧に舐めて更に柔くさす。
「あんだけまいかが反応すりゃ勃つに決まってるだろ」
静かに足の間に入り込みいきり立つ其れを握り悦びのような感情を噛み締めた。
口いっぱいに頬張りたい気持ちを抑え、舌を這わせれば太腿が微かに揺れる。その小さな反応が堪らなく私を掻き立てて、そして私を狂わせる。
じゅぽ、打ちっぱなしのコンクリートは水音が良く響く気がした。
実際はどうかなんてどうだっていい。
先生とだからそう感じるでも良い、本当に良く響くでも良い。
先生の体を、体だけでも、満たせるのならどうだって。
「先生、気持ちい…?」
「っぐ、あぁ…久しぶりだからな…」
眉をひそめて、まるでうわ言のように言う先生を見るのが好き。
誰も知らない先生が、大好き。
「嬉しい」
先生はヒーローで、先生で、魔法使い。
私の気を良くする素敵な魔法を使う人。
「まいか、出るっ……」
「出して良いよ」
だらりとベッドに置かれた左手を私の頭へ連れていき、先生の其れを刺激した。
三度、舌を裏筋に当て頭を振ると低い呻き声がして、口いっぱいに独特な匂いが広がった。
喉奥が無意識に締まる匂いが鼻を抜ける。
「…すまん。ティッシュ」
ベッドサイドに手を伸ばすよりも早く、私は喉を鳴らした。
喉に絡み付く白濁を体内に閉じ込めてしまう。
「…………飲むなとあれ程言っただろ」
硬さを失った其れを面倒くさそうに拭く姿を横目に、ぱたりと先生の横へと転がった。