第7章 Again
「ユキ行く?」
吐く息はアルコールだらけ。道の端で次の店を決めようとする同級生を横目に俺はアイツを盗み見た。
「え?まいか帰っちゃうの?」
「ん〜明日も仕事だしね」
残念がる女子越しに目が合った。俺はまだ気になる続きが聞けてない。
「ユキちゃん行くの?行かないの?」
「アブ…」
「雪くん」
そんな顔は、夢で散々見てきたんだ。次の一言は言わせない。
「やっぱり俺パス!…まいか送るわ」
「アブ!ユキ!!」
パァと明るくなる幼馴染も抜けた同級生もお構い無しに、アイツの手を掴む。
駅がある方の道をずんずんと歩けば、後ろからやんややんやと聞こえてきた。
「雪くん。手、痛いよ」
「あっ、悪ぃ…」
思い切りで歩き出したけど、駅まで五分。どうすれば良いのかなんて素人童貞の俺にはイマイチよく分からなかった。
「あの、…最寄り…どこだっけ」
「私は二駅行ったとこ。雪くんとは反対方面」
「あ、そう、か…」
気の利いた言葉が出ないのは、何故だろう。沈黙を飾るせめてもの白い息。
「終電何分か分かるか?」
「えっと、六分」
腕時計を見るとまだ余裕があって、ほっとした。
「間に合うな」
「…間に合わない方がよかったよ」
とぼとぼと俯いて小さく歩く姿を見て、俺は堪らず前を塞ぐ。
変えられると思ってた。けど、抱きしめる程の余裕は無くて、ただアイツに問い掛けた。
「じゃあ…ここにいろよ」
赤く染まる頬は慣れない酒のせいにしよう。思い切ってそう告げた。