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ENCORE

第5章 BLOOD SPLASH


「かっちゃん、待って痛い…」

今、繰り広げられている行為に愛を感じられなくなっている。それが異常なのか正常なのかすら、私にはもう分からない。

「…黙れや」

リビングで向かい合って話をしていた筈なのに、気が付けば彼が私の上にいる。乱暴に剥ぎ取られたお気に入りのワンピースを見て涙が溢れた。

「ハッ…プロヒーロー爆心地のオンナってちやほやされて今までいい思いしてきたんだろ。有難く思えや」
「そんな風に思った事なんか、一度も無いよ」

空っぽになってしまったこの部屋で、静かに零した。
オートロック付きの高層マンション。立派な家なのに、中身が無くて、虚しくて。私は彼にサヨナラを告げた。

「私は爆心地じゃなくて、貴方を心の底から愛してた。だからもうお終い」

見上げると、透き通った白い肌に藍色が滲む。毒気が抜けた彼が静かに、静かに私を見つめていた。

「明日、出て行くね。業者さんとか来ちゃうからバタバタすると思うの。だから二、三日……」
「嘘って、嘘って言えや…クソが」

止まった時間が動き出す。愛のない行為に嫌悪感は無く、ただ私を引き留めたいのに引き留める術を知らない彼が哀れで愛おしいと感じてしまった。
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