第20章 Dawn rain
「行かないよ」
私がそう言うと、周りは面白く無さそうに散り出す。
「どうして」
当の本人が行かないと言うのに引かない同期が腰に手を当てて言う。
「まいか、同窓会全然行かないじゃん。ずっと手紙来てるの私知ってるよ?毎回行かなくてもこうやって手紙くれるなんて素敵な仲間じゃん」
不思議そうに言うから私は下を向いてぽつりと零す。
「私、別に皆と仲良く無かったし」
何処かで皆との間に線を引いていた私は心からそう思っていた。
だからこれはお情けのお誘いと心のどこかで卑屈になっていたのだ。
未だ排除出来ずにいる朽ち果てた思いが時々、だらりと何かを零すからなるべく見ぬようにいた。
「それに私だけ活躍とかなんかぱっとしないし…」
取り繕うようにおどけて見せて背中に短い痛みが走る。
「まいかはすごいヒーローになったんだよ!弱音吐かなくて、泣かなくて、いつもかっこいいヒーローなんだから!すごくなったまいかを見せつけて来なよ!」
眉を釣り上げて鼻息荒く言う同期に、思わず目頭が熱くなった。
「そうやって意固地になる奴って、大体好きな人がいて消化しきれてないんだよ。まいか、そうでしょ」
意地悪く笑って同僚が顔を覗き込むから鼻の奥がツンとする。
「それにボスが有給消化しろってボヤいてた。最近厳しいんだってさ」
暖かな笑顔が私の背中を押した。
朽ち果てた思いを捨てずに居たから、今の私がいる。
そう思うと急に前向きになった気がして、仕事終わりにATMへと走った。
普段見向きもしない服屋に同期と一緒に繰り出して、久方ぶりに胸がときめいた。