第20章 Dawn rain
「四角公園地区、パトロール終わりました」
ヒーローになり数年。無線に向かい呟いて街を見る。
学生時代に経験した事は夢だったのかと思う程、街は平和だ。
でも、それで良いのかもしれない。彼が住む世界と、私が住む世界。全くの別物と思えるのだから。
「まいか!こっち!」
「お疲れ様」
手を振る同期の元へ駆け寄り、パトロールの報告をしながら事務所へ戻っていると同期が言う。
「まいか、独立しないの?」
「いや、私なんかまだまだペーペーだし」
雄英高校時代の級友は次々に独立をし、事務所を構えている。
当然の様に次はまいかだろう、と皆が言うが私はまるで他人事の様にその話題を聞き流していた。
「まいか!雄英高校から手紙来てたよ」
事務所の前に着くと寮母が箒片手にエプロンのポケットをがさごそと探った。手渡された懐かしい校章が描かれた封筒を破ろうとして肩に重みが乗った。
「早く開けてよ!」
事務所の前で立ち止まったからか、パトロールから戻った同僚や後輩が続々と集まる。
「同窓会のお知らせですね」
「まいかの代って豊作だったよね」
「私フロッピー大好きでこないだフォトブック買っちゃいました」
「イケメンヒーローランキングに沢山入ってるやんな、羨ましいわ〜学生時代イケメンに囲まれとったっちゅー事やろ?」
そんな会話を聞きながら並ぶ文字に目を落とす。
行かないと心で言う前に、声がした。
「行くんでしょ?」
同期が肩を揺すって、私に笑いかける。