第8章 【現パロシリーズ】にじり口【轟焦凍】
「まずは、右手で茶杓をとって左手で棗をとる、そして茶杓を右手に握りこんで棗の蓋をとって、蓋を茶碗の右真横におく」
先生の声が茶室に響く
説明をしながら、茶杓を持ち直して、棗の抹茶を向こうから茶杓で一杓半すくい、茶碗にいれる、その所作があまりに美しくて
皆見とれてしまっていた。
お湯を茶碗にいれるとき、スラリと背を伸ばしたまま、柄杓で釜の湯を掬う仕草も
卒がなく、凛としている。
「右手で茶筅をとって、左手に茶碗を添えて、茶筅を緩やかに腕全体を動かしてお茶を点てる」
カシャカシャとお茶の点つ音がする。
同時に香る抹茶の深い香り
とても、贅沢だ。
この空間そのものが、芸術だと思う。
「お茶が点ったら、適度に泡立てて泡のない部分が半月状に残るようにして茶筅を引き上げて元の位置に戻す…
と、ここまでだが、質問はあるか?」
皆ため息をついて首を振った。
「先生の説明がわかりやすいからァ」
「ええ、とても!」
黄色い声に、何も感じていなさそうな先生は「そうか」とだけ答えて。レッスン用の茶碗を並べ始めた。
(すごいなぁ…)
あんなに美しい所作、私もお茶を習えば身につくのだろうか。