第7章 【文スト】Gravity【中原中也】
中也は、怒りに任せていた瞳を、一瞬パチクリ瞬きさせてゆりなを見つめる
『……機嫌、治った?』
いつもはサバサバとしていて、自分からキスなど絶対にしないようなゆりなの
大胆な行動に中也は驚いたが
おかげで、さっきまでの滾る怒りは少しは緩和されたようだ。
「太宰…手前を殺すのは後回しだ
行くぞ、ゆりな」
『ひぇ!あ、ちょっと!』
中也はゆりなを横抱きにすると、踵を返して歩いていく。
ゆりなは恥ずかしさから、少しの間バタバタと抵抗をしたが
中也相手に勝てるわけもなく
そのまま運ばれ、黒塗りの窓にスモークがかった仕事用の車に押し込まれた
『ちょっと…中也、私今日は予定が…』
「あ゛?」
灰青の瞳に睨まれると、何も言えなくなってしまう
「…俺は手前にも怒ってんだ
太宰の糞野郎なんぞに触らせやがって…仕置だ」
『え…ちょっと…中也』
後頭部を捕まれ、乱暴に口付けをされる
やっと開放された時には、舌を犯され
ぽーっとしてしまっていた
「…機嫌悪ぃから、黙って座ってろ」
中也は静かにつぶやくと
ブレーキを踏む
横浜の街並みは、もうすっかり暗く、ネオンに包まれていた