第5章 【現パロシリーズ】cup of tea【物間寧人】
タクシー代3000円を払って、フラフラと玄関に向かう
鍵っていつもどこにあるかわからなくて困った
暗くて、カバンの中もよく見えないし、
ガチャガチャ探していると、手元が明るくなって視線をあげた。
「これで見える?」
手元を光らせてくれていたのは、スマホの懐中電灯機能
優しく微笑んでくれるのは金髪にグレーブルーの、絶対ここには居るはずのない人。
照らされたことで見つかった鍵を手に取るけれど、鍵穴には差し込めずに握る。
『物間…くん…
どうして…ここに』
「会いたくて、来ちゃった
前に住所教えてくれたでしょ?
ほら、雪の日に送る予定だった時に…」
言われて思い出したが、確かにあの時カーナビに住所を打ち込んだ。
鍵を見つけて、役目を終えた懐中電灯機能がそっと光を失う。
暗がりで見ても理想的な彼は、私の手元から鍵を取り、鍵穴に差し込んだ。
でも、回すことはせずに、その手で私の手を握ってくる。
まるで恋人同士が繋ぐような指をからめる手に胸が跳ねた。
「…早く鍵あけないと
手繋いでるの、近所の人に見られちゃうかもよ?」
物間くんがそっと耳元で囁く
トロリと何かが溢れるのを感じた。
もちろん、近所の人に見えるはずがない
この辺は街灯もなくて、手元も見えるか危ういほど暗いんだから。
それでも、私は玄関を開けた。
ドアの閉まる音がやけに大きく感じた。