第5章 【現パロシリーズ】cup of tea【物間寧人】
『本当にしーくんが行かなきゃいけないの?』
玄関先で駄々をこねる私の頭を旦那が撫でる
「五日間だから、すぐ帰ってくるよ」
あの過ちの日から十日以上が経っていた。
私はやっと自分のした事の悪質性に気付いて
忘れ物だと渡されていたボールペンは
捨てることは出来なかったけれど
ドレッサーの奥にしまい込んでいたのに。
こんなタイミングで決まった旦那の出張
五日間なんて、離れたくない
今一人にされたら、何をしてしまうかわからなくて怖い。
そんな私の心の内なんて知りもせず、
しーくんは俄然やる気で
新幹線で片道四時間もあるような所へ向かおうとしている。
「どうしたんだい?ゆりならしくもない」
私らしいってなんだよ
私を微塵も疑わない彼にムカムカしてきて
『うん…そうだね、私らしくないね
いってらっしゃい』
と吐き捨てるように言った。
旦那は私の声色が怒っていることにも気づかずに「お土産買ってくるからね」と玄関を閉める。
『いらない…』
と言った言葉は
ドアのしまった音で掻き消えた。