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【雑多作品置き場】short story

第5章 【現パロシリーズ】cup of tea【物間寧人】





告げたはずの住所への道と
途中から違う路線に入ったのを

注意なんてしなかった。



元々その予定だったかのようにホテルのエントランスに吸い込まれていく車。
鍵を渡すと、仕立ての良さそうなスーツを着た男性が、車を納めてくれた。
私はそれを眺めながら、導かれるままにホテルに入っていく。

ここには来たことがある。
主婦会でアフタヌーン・ティーに参加した時と、大して仲の良くない友達の結婚式、結婚記念日のディナー。






今夜の利用目的は?





幸いにも問う人はいない



腰を抱かれたままエレベーターが登っていく。

ある階数からエレベーターの外はガラス張りになって夜景が広がった。

真っ白な世界が、足元に広がる。

あの遠くに見えるどこかの光の中に、しーくんは居るのだろうか。

こんな時に限って、返事は来ていない。


日頃のLINEの回数の少なさが、私にストップをかけてくれなかった。

誰かのせいにしないと、何かのせいにしないと

今からしようとしているコトへの、言い訳がつかなくて、理不尽だとわかっていても
淡白な旦那のせいにしてしまう。

チン、と上品な音を立てて
エレベーターが音もなく開いた。


腰に添えられているだけの手は、無理強いをしていない


自分の意思で進むしかないんだと
いつでも逃げれるんだと

言われているみたいだったけれど


私はヒールを鳴らした



誰に命令されたわけでもなく



自分の意思で。


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