第5章 【現パロシリーズ】cup of tea【物間寧人】
ゆりなは出来るだけ心の中を悟られないように、笑顔を作ったまま品を進める。
『お肌の色は白くていらっしゃいますか?
でしたらこのようなお色が人気でして…』
色を見せるために私の手の甲に塗ってみせると、物間くんの細い指先が、口紅を塗ったところのそばを撫でた。
初めて触れ合う肌にビクッと体が震える。
一瞬だけだったのに、何か、電気のようなものが体を走った気がした
「ちょうど…これくらいです」
若い男の指先が
手の甲を這う
それだけで、体の芯が熱くなっていくのを感じた
この指で愛される女はどんな顔をしているのだろう
羨ましさと、嫉妬が混じった感情が生まれて
自分のことが怖くなった。
私は、パッと手を離し、俯く。
悟られないように…
想いを沈めたところで、彼女の肌の色に合いそうな口紅を二、三本目おすすめする。
物間くんは
一本一本私の手の甲に塗って色を確かめた後、そのうちの一本を買っていった。
きっとその口紅を塗った唇で愛を囁き
キスをして、彼に愛され喘ぐんだろう。
また心に生まれた、黒いモヤに制服の胸元を掴んだ
掴んだ右手には、彼が買っていった口紅の色が赤く塗り込まれていた。