第4章 【キスミー番外編】。❅°.【轟生誕祭2018】
授業を終え、ゆりなは
一緒に寮に帰ろうと言ってくれる
さき達の誘いを断って、校門を後にする
別に逃げようって言うんじゃない
せめてケーキだけでもと思って
学校近くのケーキ屋さんに向かっているのだ
煉瓦造りの可愛い店の中で、ゆりなは迷うことなくケーキを選んで
小走りに寮に戻る
ポットを準備して待っていると、軽いノック音がして焦凍が部屋に入ってきた
『適当に座っててくれる?』
「あぁ」
足を崩してコーヒーテーブルの横に座る焦凍
『ちょっと、お湯沸かしてくるね』
まっててね、と付け足すと
「湯なら、俺が沸かす」
といって左手を差し出してきた
私は一瞬きょとんとしたけれど
ポットを渡すと
左手を当てて熱で湯を沸かす
『わぁ…すごい、そういう使い方もあるの?』
「まぁな」
ほんの少しの時間でお湯は湧いて
紅茶の準備が整う
箱からホールケーキを取り出してテーブルの上に置くと、焦凍は少し驚いたような顔をした
「これ…」
『あー、サッと買ってきたの
ごめんね?ケーキ、何が好きかわかんなくて
でも、ほら
ちょっと焦凍っぽいよね』
くすくすと笑うゆりな
テーブルの上のケーキは
真っ赤なイチゴと、真っ白なホイップが乗った
王道のショートケーキのホールだ
ゆりながろうそくを丁寧に立てて
轟が火をつけた
ゆりなはコホン、と咳払いをして
恥ずかしそうにハッピーバースデーの歌を歌ってくれる
時々目が会うたびに、真っ赤になって逸らされてしまうけれど
そんな姿も、可愛らしい。
『ハッピバースデートゥーユー♪
…焦凍、お願い事して火を消して?』
「願い事?叶うのか?」
『うん!』
轟はそうか、と呟いて律儀に両手を合わせて願い事を1つ心の中で唱えると
火を吹き消した
ろうそくの先から煙がふわりと浮かび上がる
ゆりなは嬉しそうに手を叩くと
ケーキを切り分けてくれた