第26章 【キスミー番外編】9.5章
「…まだ、ヤってねぇの?」
お詫びに奢らされたアイスを噛み砕きながら、爆豪勝己は小さく舌打ちした。
「順番ってもんが、あんだろ」
「いや、それはそうだけど…
え?じゃあまだキスも…」
「し と る わ!!」
吠えられて飛び散った唾を拭きながら、男は苦笑う。
「いや、してんなら次はもうセックスだろ」
「っ…!
それは、まだ、早えぇ」
そう呟く爆豪は、また大口を開けてアイスを噛んだ。
「早いって…俺ら高校生だぜ?
岸本と黒川だって中二で卒業してたしよ
今どき高校生でヤってるやつなんて…」
「あ?岸本?黒川…誰だそれ」
「お前ってそういう奴だよな」
ため息をつくが、爆豪は我関せずとまた前を向いた。
「ゆりなは、そういうんじゃねぇ…」
「そういうんじゃ…って
は?爆豪、お前まさかあの子でも勃たねぇとか……もしかして、お前…Eで…」
そこまで言って、口を塞がれた、
いや、掴まれた。
片手でぐわっと、鷲掴みに。
「それ以上言ったら、殺す」
鼻腔をくすぐるニトロの香りに、背筋が凍る。
静かに頷くと、爆豪は手を離した。
「俺はてめぇらみてぇな猿とは違ぇ
大切にしてんだ、クソが」
投げたアイスの棒は綺麗な放物線を描いて、道端のゴミ箱の中に着地する。
「そっか、いいな、そういうのも」
爆豪とは、その道の別れ道で別れを告げ
俺はそのまま家に帰った。
相変わらず、爆豪は怖くて、威圧的で。
でも、確実に、前よりも
ヒーローらしく、なっていた。