第26章 【キスミー番外編】9.5章
「つーかさ、お前彼女できた?」
「あ゛?」
「いや、最近爆豪がさ、めちゃくちゃ可愛い子と歩いてるって聞いたから
あ、もしかして体育祭の女神?付き合ってんの?」
体育祭の女神と言われて、ゆりなの事だと納得する。
メディアがギャーギャー騒いどるせいで、ファミレスだろうがゲーセンだろうが、視線を集めて仕方ねぇ。
苦肉の策で俺の家での勉強会がデートコースに定着してしまっているのだから、
苦い顔になってしまうのも無理はない。
「だったらなんだよ」
レジ袋を受け取り表に出ても、そいつは俺の腰について来て
ヒラリと横に躍り出るとニヤニヤとした表情を向けてきた。
「お前に彼女ねぇ
決めた女が居るとか、散々言ってたけどよ
結局面食いだっただけか?」
爆豪の手のひらから小爆発が生まれ、こめかみに血管が浮き出る。
男は小さくヒッ!と悲鳴をあげ、距離をとった。
「違ぇわ!
アイツが決めてた女なんだよ
つか、てめぇにンなこと関係ねぇだろ」
「悪ぃ悪ぃ、
あ、じゃあさ…」
男は適当に謝って、そっと爆豪の耳元に口を寄せた。
「彼女と、どこまでヤった?」
「…は?」
「いや、「は?」じゃなくて…
あの子とどこまでヤったんだよー、あの体だもんな、もう最後まで……」
男はゆりなの体付きを両手で表現しながらニヤニヤと笑う。
が、目の前の同級生の異変に気付き、その手つきを止めた。
「ばく、ごう…?」
爆豪勝己とは、幼稚園の頃からの付き合いだ。
実力のあるガキ大将。
誰も叶わない絶対的王者。
生まれつきの勝ち組。
全てを威嚇するその男の、10年ちかく知っていても、1度も見たことの無いその表情に
男は戸惑った。
「ば……!てめ…!」
爆豪勝己、15歳。
中学時代、横でエロ本を読んでいても、AVを見ていても、顔色ひとつ変えなかったその男の
首まで染まるほどの赤面。
「ンなことするわけねぇだろうが!!!」
住宅地に響く叫び声に、車の上のネコが逃げた。