第20章 So Cute!【相澤消太の場合】
次の徒競走の番が来て、今度こそ、頑張らなきゃと思っていたら、メガネの男の人がビシッと手を挙げた。
「先生!」
「なんだ飯田」
「俺が彼女を抱えて走っていいでしょうか!」
『えぇ!?』
突然の申し出に、私は悲鳴をあげたが、先生は「好きにしろ」と言うだけで。
私はメガネの男の子に何故か背負われたまま、スタートラインに立った。
『あ、あのー…流石にこれは……』
小さく手を挙げて先生を見るけれど、ホイッスルをくわえているだけ。
ピッ!と小さな音がして、わたしは次の瞬間ゴールに来ていた。
『は…はや…』
「俺も、君の除名は免れたいんでな
少し手助けさせてもらったよ!」
ビシッビシッ!と音を立てながら手でよくわからない仕草をし、笑顔を向けてくれるメガネくん。
『あの…ありがとうございます…』
「礼には及ばない!
むしろ、こちらこそありがとう!
君みたいにかわいい人と同じクラスになれた事を誇りに思うよ!」
その後の、立ち幅跳びは、推薦入試の時に同じだった轟くんが作ってくれた氷橋の上を歩くだけ。
握力測定は、手が沢山ある障子くんの上から手を乗せるだけと、
結局自力でやったのは長座体前屈と、反復横跳びだけだった。