第18章 【夜シリーズ】イロコイ3【轟焦凍】
伸ばしかけた手を、掴んで引き下ろした。
「もう帰んのか?」
『だって、ほらあの席の子。
焦凍のお客でしょ?』
彼女の視線が下る方を見れば、たしかに、なかなかの太客がヘルプのホストと話しながらこちらを睨みつけている。
「関係ねぇ…
オレは、ゆりなさんと話してぇんだ」
こうなってはどっちが客だかわかったものじゃない。
そんな轟をたしなめるようにゆりなは俺の手に柔らかな手を重ねて微笑んだ。
『そんなこと言ったら炎司さんに怒られるわよ?』
「また親父の話か……」
轟は途端に視線を鋭くし、聞きたくないとゆりなから目をそらす。
『そうもいかないわ。
炎司さんからも、「焦凍を頼む」って言われてるんだから』
ついに持ち上がった手が黒服を呼んで
轟が1番聞きたくない言葉を吐いた。
『チェックお願い』
この言葉が、彼と彼女を引き離し、ホストと客にたらしめる。
銀トレーに置かれたブラックカード。
今日はいくら使ったのかなんて彼女はきっと把握していないのだろう。