第17章 【夜シリーズ】イロコイ2【爆豪勝己】
『そ…だよね……』
私はできるだけいつも通り笑うと、ギュッとスカートを握る。
『変な事言ってごめん!
お詫びに今日は……、何か…いいお酒頼んじゃおうかな!
うん…、そうしよう!
ロマネ、お願いします…』
コレは、私からの「サヨナラ」だ。
最後に、今までずっと私を勇気づけてくれた…偽りでも…愛してくれた
夢を見させてくれた貴方に、感謝の気持ち。
勝己は、当たり前のようにロマネのオーダーを入れる。
バースデーでもないのに入ったロマネに、少しだけ店がザワついた。
ほかのホストから嫉妬の目が向けられている時の
この勝己が好き。
誰も近寄せない、確固たるオーラ…。
(あぁ…好きだったな…)
なんて、今更…
ロマネコンティを入れた客には、入れてもらったホストが歌を歌ってくれる。
勝己の事だから、自信たっぷりの歌詞の歌を選ぶんだろう。
そんなことを思って、マイクを握る勝己を見つめる…
けれど、始まった曲のイントロは
なんとも切ないピアノの音色
曲名に目を向けるとT-BOLANの「離したくはない」…。
かなり昔の曲のはずだ
美声で歌われる曲の歌詞が、トロリ…胸の中に溶けていく…
この歌詞が、私に向けられているなんて
自惚れたら行けないと思うけれど
勝己の赤い瞳が、私を真っ直ぐに見つめるから…
あぁ……そんな目で、そんな声で、そんな事言わないで…
ーーーこんなに…愛してたなんて、もう…
ーーー離したくはない…
曲が終わる頃には、私の涙は止まらなくて
歌い終わった勝己にクラブ内に響く拍手
ホストクラブでこんな拍手が起きるなんて異例すぎることで
でも、自分の席のホストじゃなくても拍手を送りたくなるような歌唱力
本当に、あなたはどこまでも、完璧なんだ…。
こんな人に出会って、他の誰かなんて、見ることが出来ない…
出来るはずがない
勝己は泣きじゃくる私の肩を抱いて
そっと頭を撫でてくれた。
「泣くな
俺を捨てて幸せになんだろ?」
『かつ…きぃ……』