第17章 【夜シリーズ】イロコイ2【爆豪勝己】
「今月、俺のバースデーロマネ入れろよ」
『うん!入れようかなって思ってるよ?
それか、タワーにしようかなやんでて、どっちがいい?』
「どっちも」
勝己の返事に私は『え…』としか答えられなかった。
「だから、どっちも」
もう一度言われて、ますます困る。
だってロマネだけで手一杯だ。
ロマネ1本1000万円…。
先週もリシャールを入れたばかりだし、今月はまだ中盤だというのに既に1000万はゆうに使っている。
「できねぇとか言うんじゃねぇよな?」
『…ううん!
できる!そうだよね、勝己と初めてのバースデーだもん
どっちも入れるよ!』
ガッカリされたくなくて、そう言った。
頭の中で、預金通帳をめくるけど、大丈夫、まだまだ残ってる。
地主だったおじいちゃんの遺産が入ったのが、つい一年前。
投資をやりたいからって、親に嘘をついて、全部間借りしているけれど、本当にいくらかは投資しているから
それが当たれば遊んでいるお金も余裕で回収できるはずだ。
うちの席のリシャールコールが終わると、入れ替わるみたいに、
「リシャール!2本いただきましたァ!!!」
と声が掛かる。
声の先を見ると、高台の席だとわかった。
高台の席にはナンバーワンが座っている。
入口に貼られた大きな写真で見た顔をぼんやり想像した。
とても綺麗な顔だけれど、片方に大きな痣のある、轟さん。
優しそうで、私のタイプではないけれど、確かにとてもイケメンだし、何よりこのクラブyuueiで、入店1ヶ月でナンバーワンになってから、1度も誰にも順位を譲っていない。
チッ…と、勝己が舌を打つ音が聞こえる。
せっかく280万円で買った機嫌の良さが、もう意味をなくしてしまったようだ。