第16章 【夜シリーズ】イロコイ【上鳴電気】
時間差で席に戻ると、電気は私の席にはいなかった。
キョロキョロと探してみると、あのストーカーの席に呼ばれてて…
少しムッとしたけど、電気は私のものだし…
そう思うとギリギリ許せた。
30分まって、やっと電気が帰ってきてくれて、席に着くなりギュッって抱きしめてくれる。
「おまたせ♡」
『ホント、すごく待ったよ?』
「ゴメン。
てかさ、明日も来てよ。会いたい」
電気は私の頭を撫でながらそう言って笑う。
笑う時に見える犬歯が可愛い。
『えー…でも今月きつい…カモ』
ホントのことを言うと、高校の頃からコツコツ貯めてた貯金は残すところ5万もない。
親が結婚資金に貯めてくれていたお金も、使い切ってしまったし…
今日使った500万円でギリギリだ。
本当は300で終わらす予定だったのに…。
「ヤダ、あいたい。
し、今月まじやばいんだって。」
『でも……』
私はどうにか何処かからお金を引っ張ってこれないか考える。
けれど、金融業者しか思いつかなくて首を横に振った。
もともと遊んでいたお金も、友達に誘われた投資がたまたま当たってできたお金だ。
(来月まで待ってくれたら、ボーナスが入る…とりあえず50万はあるはずだし…)
そう考えていたら、電気がフワリと私を抱きしめてくれた。
香水がやけに強く香る。
まるで私にマーキングしているみたいで、すごくドキドキした。
「ワリ…ワガママ言った…
無理させれねぇよな…
オレ、おまえが他の男とエッチするとか耐えられねぇもん
だから、アイツみたいに売春すんのは辞めてな?
いくら金がいいからってさ…」
『あの人…売春してるの?』
視線の先にはさっき電気にロマネを入れた女…。ロマネは1本で300万……。
(あの女は電気のためにそこまでしてるのに…)
そう思うと、悔しくて爪の先が電気のスーツにくい込んだ。
…私がいなきゃ電気はダメになっちゃう
私が支えなきゃ
支えるのは私じゃなきゃ…