第16章 【夜シリーズ】イロコイ【上鳴電気】
『いかないで、ね?』
「オレだってさ、あんなブスの相手したくないよ?でも、さ。わかってよ、な?」
電気は聞き分けのない子供をあやすような言い方で私に囁いた。
「15分したら帰ってくるから」なんて、出来もしない約束をして、ヘルプの男の子に声をかけている。
私は、カバンをひっつかんで中を漁った、電気はヘルプに声をかけるのをやめて私の手元を凝視する。
『行かないでくれたら、これ
あげる。』
カバンからのぞかせた、1束。
電気の喉がゴクリとなるのが分かる。
絶対に負けたくない…。
たとえ金で買った愛だと罵られようが、私は、今この瞬間電気を手放したくない。
電気が黒服に耳打ちするのを、バクン、バクンと跳ねる心臓を抑えて見つめた。
黄色の瞳がこちらに向き直って、笑ってくれる。
(やった!勝った…!!)
電気はこのままそばに居てくれる。
あの女に勝てた。
それだけで、私は充分にしあわせだった。
ここからは見えない席で、あのブスが地団駄踏んでるのが目に見えるみたいで、喉元を突き上げてくる優越感に口の端が釣り上がる。
『ねぇ…電気』
体を剃り寄せると、電気は「ん?」といって肩を抱いてくれた。
『もう100万円…欲しくない?』
私の囁きに、電気の瞳がギラついた。