第2章 【爆豪勝己】甘い香り【R指定】
箸が止まってしまう
やっぱり私が人を好きになるなんて…
好きになった人に迷惑をかけてしまうのかも
爆豪「気にすんな」
ハッとして顔を上げる
爆豪「オレはモブに見られようが、陰口叩かれようが気になんねぇ」
メモを取り出してペンを走らせる
【なんでわかったの?】
爆豪「何が」
【私が考えてること…
もしかして爆豪くんも心が読める個性なの?!】
爆豪「ちげぇよ、んなもん顔みてれば分かんだろ…」
私は少しほっとして、またお弁当を食べ始めた
もし、心が読める個性だったら恥ずかしすぎるもん
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〜爆豪side〜
ごちそうさまをして、お弁当をおさめるゆりな
ずっと見てても飽きねぇな
なに?って顔してこっちを見てくる
【なに?】
きれいな字で書かれたメモ
爆豪「なんでもねぇよ」
昨日のDVDに映っていたゆりなと
俺の目の前にいるゆりな
たしかに同じ人物なんだが、何かが違う
爆豪「歌…」
驚いたようにゆりながこちらを見る
爆豪「歌ってたんだろ、昔
オレはそういうの詳しくねぇから、ずっとお前のこと知らなくて…
悪ぃ…
普通は知ってるもんなんだよな」
ゆりなはフルフルと首を横に振る
【やっぱり知らなかったんだね
初めてあった時、そんな気がしてた】
爆豪「悪ぃ」
【ううん、逆に嬉しいの
だって爆豪くんは、私を知らないのに優しくしてくれた
助けてくれたんだもん】
爆豪「……オレは知ってたら良かったって思った」
爆豪「お前が、どんな理由で声を失っちまったのか知らねぇけど
もし、もっと前に出会ってたら
助けられたかもしれねぇって…」
昨日見た映像の中で歌うゆりなはとても活き活きとしていたが、
ふとした瞬間に悲しげな表情も見せていた
きっと失うまでに色々あったんだろう
【歌うのは好きだったよ
でも、それが私を苦しめてたところもある
だから、今は声がないからこそ出来ることがしたいの】
普通の女の子として
ゆりなの唇が音無く、そう動いた気がした