第14章 【文スト】運命を見つける60秒間【江戸川乱歩】
けれど、そんな無意味な逃亡は叶わずに、すぐに膝を揺らしながら、首を反らし
『め…、イク…♡いっちゃ♡からぁ』
と猫の鳴くような声を上げて果てた。
遅れてきたように、何度か乱歩の掌を濡らす潮を吹いて、ぐったりとシーツに沈み込む。
「…どうしよう、何だか…すごく可愛い」
乱歩は、高揚した表情のままゆりなに覆いかぶさると男根をゆっくりと秘部に押し当てた
『ぁ……』
挿れられてしまう、と思った。
さっき名前を知ったばかりの男に、こんなにも簡単に体を許してしまう…と。
けれど、彼のくれる言葉、仕草の1つ1つがあまりにも魅力的で、あれよあれよといっている間にここまできてしまった。
ぬちっ…と小さく何かが始まる音がする。
後悔の始まりなのか、恋の始まりなのか
わからなくて目を細めたけれど
薄くなった視界の先で、男は
「あ!忘れてた」とこの場に相応しくない声をあげた
『……?』
乱歩さんはガサガサと脱ぎ捨てた服をその場所のままで漁るとゆりなの手を持ち上げて何かを手のひらに乗せた。
快涙の溜まった瞳を擦り、間接照明頼りの部屋の中で目を凝らすと
手に乗せられていたのは大きなダイヤのついた指輪だった。
『えっ?!』
ゆりなは驚きのあまり、その指輪をうっかり落としそうになったが、それを乱歩が空中でキャッチする。
『え…あの、それ…』
「これってつけるの右手だっけ?左手だっけ?」
乱歩は、驚いて動けないゆりなを他所に、そうか左手だよねーと言いながらゆりなの左手をすくい上げて薬指に指輪をはめた。
「ゆりなさん
僕と結婚しよ?っていうかするよね?
してくれないと僕が困るし」
座右の銘を、「僕がよければ全て良し」と掲げるだけあってどこまでも自己主義なプロポーズにゆりなは思わず笑ってしまった。
だってこんなの絶対におかしい
下腹部は中途半端に繋がったままだし、2人とも裸で、タイミング…もう少しあったんじゃないかな