第2章 【爆豪勝己】甘い香り【R指定】
教室まで小走りで向かう
早くあかねちゃんに聞いてほしいよぉ
教室に入り、あかねちゃんの手をぎゅうって握る
心読「うわ、うるさ!(笑)
ちょっと落ち着いて、思考まとめてくれないと読めないよ?!」
あ、そういうものなんだ
一旦手を離して深呼吸を2.3回する
そろそろいいかな…
あかねちゃんが「どうぞ」って手を差し出してくれる
心読「え!爆豪ってあの目つき悪い人?!」
そう、その人!首を縦に振る
私その人のこと…
心読「好きになっちゃったんだ」
そう言われると顔が熱くなる
あかねちゃんには嘘も隠し事もできない
心読「お昼ご飯誘われたの?」
首を縦に振る、どう思う?
心読「そりゃあっちも、ゆりなのこと好きだからじゃないかなぁ
あ、心読もうか?」
ううん、と首を横に振る
それは爆豪くんに悪いから大丈夫
チャイムが鳴って、手を離して席につく
席についていてもフワフワした感覚
本当は初めて会ったあの時から、爆豪くんのこと気になっていた
あの日、すごく気持ち悪い男の人にお尻触られてて
声も出せないから、助けてって言えなくて
あと少しだからって我慢して
そしたら、爆豪くんが…こう
グワってやっつけてくれて
すごくすごく、かっこよかったの
目が合ってすぐ、この人の事…特別だって感じた
爆豪くんも、私の事特別って思ってくれてるのかな…
ふとノートを取る手が止まる
それは声を失うまで考えても見なかったこと
私の個性は【魅了】
直接、私の声を聞いた人は誰もが私を好きになってしまう
電話や録音は効果なし、マイクは効果あり
いつも私は誰かの特別で
それが当たり前の人生だった
アイドルになっても、それは変わらなくて
でもそれが酷く虚しくて
だって、みんなが私を好きなのは私の個性のせい
騙してるような、操っているような申し訳ない気持ちになって
私は声を出すのをやめた
何ヶ月も出さなくなると、出し方を忘れてしまったようで
そのまま声を失った
お医者さんは精神的なものだって言う
でも私はこのままでも構わない
こんな個性が無くても
本当に私を好きになってくれる人に出逢えたら…
あかねちゃんは、その1人だった
個性を失ってから初めてできたお友達
爆豪くんも…
私の事好きになってくれたら…なんて